安部公房全集、ついに完結2009年03月23日

 安部公房全集の第30巻が刊行された。最終巻である。さっそく入手した。第1巻から第29巻までの29冊は1997年7月から2000年12月まで約3年かけて刊行された。第29巻の挟みこみに、「別巻・書誌(第30巻のこと)」はしばらく先の刊行になるに見込みとの案内があったが、「しばらく先」が8年以上先になるとは思わなかった。新潮社の持続力に感心した。

 この全集の特色は完全編年体であることだ。この特異な全集の編者は安部公房と安部真知の一人娘・安部ねりのようだ。第30巻には安部ねりが書いた「安部公房伝記・年譜」「おわりに―感謝の言葉」なども収録されていてる。
 娘が書いた伝記は、両親の思い出話の趣もあって面白い。かつては時代のヒーローの一人だった作家の晩年の様子も興味深い。

 完全編年体の全集をパラパラとめくってみるだけでも、一人の作家の生涯を眺望しているような気分になり、この作家は何者だったのだろうかという関心があらためて湧き上がってくる。
 最終巻の月報は「安部公房の座標」という表題の三浦雅士の評論だ。安部公房のリルケ体験をベースに、20世紀の思潮の展望のなかでの安部公房の位置づけを試みた刺激的な内容だった。

 安部公房は論じやすそうで論じにくい作家だと思うが、いつか、じっくりと安部公房について考えてみたい。